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とあるビルの、1階から30階への直通エレベーターの中に私達はいた。
地震で緊急停止した後、一向に復旧の兆しがなく、非常用の連絡ボタンも故障したのか反応がない。
携帯もさっきからずっと圏外だ。
大きな地震だったから、ビルの中にいた人達はきっとみんな避難してしまったのだろう。
叫んでも誰も来てくれなさそうだと悟ってからは、「何か話でもしませんか」という彼女の提案に乗り、私達はとりとめのない話をしていた。
不安定で冷たい釣箱に偶然一緒に囚われてしまった者同士、お互いに少しでも気を紛らわしたかったのだ。
彼女と私はどうやら歳が近かったようで、非日常な状況下にいる緊張もあいまって、話してみればあっという間に打ち解けられた。
無難な世間話のネタが尽きた後、私達は、それぞれの彼氏について話し始めた。
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