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「私の彼も、急に連絡がとれなくなってしまって。私は彼のことが大好きで、結婚して、死ぬまで一緒にいようって、何度も約束したんです。彼も頷いてくれて、私達、ずっと上手くいっていると思っていて、でもこの間、君は重すぎてもう付き合えないって、いきなりラインが来て、彼とはそれきり…音信不通なんです。」
「うわ、何それ酷い。有り得ない。」
こんな可愛い子が自分のことを想ってくれる、そんな幸福を何故、そんな無下な一言だけで切り捨てられるのだろう。
話を聞いて、まるで自分が捨てられたような気持ちになり、気分が悪くなってきた。
自分の悲しみと彼女への切なさが化学反応でも起こしたのか、体が芯からどんどん冷えてくる。
「私、彼に何か悪いことしちゃったのかなって思って、もしそうなら、彼に一言謝りたくて、だから私…何度も連絡して。彼の家にも行ってみて、でも結局、会えませんでした。ショック過ぎて、ここ数日のこと、実はあんまり覚えてないんです。最初の頃のデートでここに連れてきてもらったなぁって、楽しかったこと思い出したせいだと思うんですけど、いつの間にか、ここにいました。」
「そっか……。あなたも、辛かったね。」
ようやく一言、絞り出すようにして返す。
私が暗い顔をしているのを見て、悪い話をしたと思ったのか、彼女はそこでふと、
「あ、でも、今は何だか、生まれ変わったみたいなんですよ。」
と、楽しそうに笑ってみせた。
「心も体もふわふわで軽いんです、不思議と。彼のことはもうどうでもいい、無かったことにしようって思えて。」
健気な彼女を見ているうちに寒さは消え、私も何だか笑えてきて、言いたいことをどんどん口にした。
「なんかさー…、男って、何でこんな勝手なんだろうね。」
「本当、そうですね。」
「私達、こんなに相手のこと考えてるのにね。それが当たり前みたいな態度のとことか、超ムカつく。傷つけたのはそっちなのに、こっちが泣くと面倒くさがって。女の子を幸せに出来ない男なんて、独りぼっちのまま、みんな死んじゃえばいいのにね。」
「あ……あなたも?あなたも、そう思いますか?」
「うん。そう思う。」
私達は顔を見合わせ、微笑んだ。
それからどれくらい経っただろう、私は眠ってしまっていたようで、床ががくんと下がる衝撃で目を覚ました。
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