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「まだ撮っているのか?そろそろ行くぞ」
「もう少し、最後にもう一枚だけ・・・」
「私たちの生まれた街の最後の姿だから・・・」
彼女はそう言ってレンズをのぞき込み、無言のままシャッターを切った。
汚染が広がり捨てられた僕らの町、それは降りしきる死の灰に包まれた凄惨なものだった。
「気が済んだら行くぞ」
行く当てなどない、この地上のどこかにあるかもしれない、まだ残された土地を目指すだけだ。
無心にレンズをのぞき込む彼女。
積もった灰はまるで雪のようだった。
ーEND-
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