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あの夢が、なんだか頭を離れない。夢らしい夢だと言い切ってしまえばそれまでだが、説明のつかないものを説明しようとしているような、ふわふわした感じを拭い去ることができない。これを違和感と呼ぶのだろうか。
通学路の道中、後ろの席の田中を見つけて驚いた。クラスの中の誰よりも早く教室入りをすることで有名な田中が、時間ギリギリに家を出る僕と並ぶなんてなかなかない。特別仲がいいわけでもないが、思わず声を掛けてしまった。
「おはよう、田中。こんな時間に珍しいな」
「ああ、佐藤か。実はな、窓がちゃんと閉まってるかすごい気になっちゃって」
振り向いた田中は、少し疲れた顔をしていた。
「部屋を出るとき、何回も閉まってることを確認するんだけど、もしかしたら開いてるんじゃないかと思って、また確認するんだ。いつものことなんだけど、今日は家に誰もいないから、不安で仕方なくて。」
「確認して閉まってたら、大丈夫なんじゃないか?」
「俺が窓から目を離した瞬間、何らかの理由で物理法則がかわって、窓が開くかもしれないだろ」
そんなわけない、と言おうとしたところで、田中はたたみかける。
「そんなこと絶対に起こらないなんて、誰も証明のしようがないじゃないか!」
まあ、そう言われればそうだけれども。スッキリしないまま、ふたりはならんで歩く。別に悪口を言ったわけでもないのに、なんだか僕が悪いみたいになってしまった。
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