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「やあ、田中と…佐藤か!ちょっとこっちに来てくれ」
歩道の真ん中で、同じクラスの渡辺がこちらに手を振っている。二人の間、少し嫌なムードを振り払うように彼のもとに駆け寄った。
「変なことを言うけど、変だと思わないで聞いてくれ」
渡辺のはにかんだ表情に、僕らは目を見合わせた。
「俺の弟が車いすを使っているのは知ってるよね。普段歩かない人に歩くって説明するとき、どうやったらいいんだろうと、ずっと思ってて。」
「どういうこと?」
「そしたら、自分がどうやって歩いてたか、わかんなくなっちゃって」
不安というより、この世の終わりみたいな顔をしている。渡辺はパニックを起こしているようだった。
「笑い事じゃないんだ!ねえ、前に踏み出すとき、足のどこに力を入れたらいいの?体の重心は?関節は?うまく歩くコツは?」
「コツも何も、足を交互に踏み出せばいいんじゃねえか」
「簡単に言うけど、何回やっても転ぶばっかりで…」
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