「彼」という存在

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九十九刹那くんと出会ったのは中学生の頃だった。 そして、中学の時からずっと好きだった。 中学生の頃の九十九くんは、あまり他人と関わることはせず、友達と一緒に帰ったり、遊んだりという事は誰もしていないし、九十九くんを友達と思っている人はまずいないと思う。 しかし、決していじめられることはなかった。 彼は必要最低限の関わりをして、クラスに溶け込んでいたのだ。 誰からも嫌われることなく、好かれることもなかった。 でも、そんな九十九くんに私は恋をした。 そのきっかけは、放課後の図書室での出来事だったと思う。 その日は、借りた本を返却する日で、昼休みに返却するのを忘れ、放課後に図書室へ向かっていたのだ。 私は本を読むのが好きな子だった。本は、私を色んな所へ連れてってくれる。そこは、過去だったり、魔法の国だったり、まるで、自分がその世界に居るような気がするのが私は好きだった。 私は図書室のドアに手をかけ、図書室に入った。 放課後となると、皆部活へ行ったり帰ったりするため人はまず見当たらない。 私は静かなこの空気が好きだった。 本を返却して帰ろうとした時、本のページを静かにめくる音が図書室を響かせた。 放課後に本を読む人などいるはずがない。そう思っていたため、私はその音が確かに聞こえたほうへおそるおそる視線を向けた。
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