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そこには本棚の前で立ったまま本を読んでいる、
九十九刹那くんが居た。
私は、その姿から目を離すことがなぜか出来なかった。
なぜなら、彼の本を読んでいる姿は、とても静かで、とても優しく、まるで大切な誰かを愛でるように本のページをめくっていたのだから。
私も本は大事にするけれども、彼のようにページをめくっていただろうか。
いや、私は早く物語の続きが読みたくてすぐさまページをめくってしまう。
でも、彼の読み方は、おそらく物語の言葉ひとつひとつを噛みしめているのだろう。
私は、一体どれくらい彼を見ていただろう。
彼が最後のページをめくり、ゆっくりと本を閉じる。
彼が読んでいた本は、閉じる際には大きな音がするくらいの厚さがある本だった。
しかし彼はその音を出すことさえも優しく、まるで、ふかふかのベッドに包み込むような柔らかい音を立てただけだった。
私は、その音を聞いてやっと我に返り、それと同時に
「あ、」
と、声を出してしまった。
もったいない、と思ってしまったのだ。
本を読む姿が。
ページをめくる彼の動きが。
まだ見てみたい、と。
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