九十九刹那という男と「僕」

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九十九刹那という男と「僕」

気がつくとそこは僕の知らない世界があった。 知らない物、知らない色、知らない香り、 そこにある全てが新鮮で、僕の記憶の中には存在しないものだった。 僕の、記憶 ──。 そう思うと僕の中に1つの疑問が生まれた。 「僕」は誰? そう僕の記憶はない。 僕はなぜか「僕」という存在を忘れている。 「僕」以外の何もかもを忘れている。 しかし、その中に唯一知っているものがあつた。 「つ、九十九くん?大丈夫?」 僕はこの声を知っている。 いや、覚えている。 僕は声の方へ振り向いた。 するとそこには知らない彼女がいた。 声は知っているはずなのに、知らない彼女。 僕はいつまで彼女をみていただろうか。 彼女は少し震えながらも、どこか落ち着くような、「良い声」をしていた。 僕はもう一度彼女の声を聞きたいと思ったが、彼女の言った声に疑問があった。 「『つくも』とは僕のことでしょうか?」
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