九十九刹那という男と「僕」

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すると、彼女は何かを思い出したかのように押し入れの中に入り、何かを探しているように見えた。 「あ、あった」 と、彼女の声が押し入れの中から聞こえた。 彼女が押し入れから出ると、手に何かを抱えていた。 それは、少し厚めの本のように見える。 それは久しく開いてなかったのか、埃をかぶっていた。 彼女はその埃を払った後、僕に渡してくれた。 「これを見て少し思い出せればいいけど…」 それを僕は何も言わずに受け取り、それを見た。 その本は少し重みがあり、空のように澄んだ水色をしている。また、表紙には銀色で、「翼咲 ーtubasaー」と書かれており、普通の本ではないということが分かった。 僕は最初の一ページをめくった。 その1ページ1ページが僕の知らない、見たこともない人がいて、その人同士が同じ服を着ているときもあれば、違う服装で楽しそうに笑いあったり、真剣に考えたりしている様子が見られた。 数ページをめくっていると、ふと1人の少年が気になった。その少年は他の人とは違う雰囲気を出していたことが、その顔を見るだけで伝わる。 その少年の写真の下には「13番 九十九刹那」と書かれていた。 おそらく彼が彼女の言っている「つくもせつな」だと理解した。 彼女には僕が「彼」のように見えている。 だけど僕はその顔を見てもあまりピンときていない。 何となく似ている気がするが、違う気もする。 彼がいるということは、おそらく彼女がいるだろうと思い、彼女の写真を探した。 「3番 移川翠月」が居た。彼女の写真は、笑っており、とても楽しそうだった。 その彼女を見たとき、何かが頭の中に入ってくる感覚が走った。
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