「僕」という存在

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といっても人のように殺すのではない。 殺すのは彼女の寿命である。 僕らは、人から『死神』と呼ばれている。 死神は、死した生物の魂を喰らい、新たな生命を造る糧とする。 1つの魂に1つの生物を宿す。 そうすることで過剰な増え方、減り方をしないよう均衡を保っていたのだが、 どこかの神様が『人間』なんていうものを造り出したせいで、生命のバランスが崩れ始めている。 人間は生命の理から外れ、今もなお増え続け、他の生物が減り続けている。 そのバランスを保つため、死神は新たな権限を手にした。 それが、『命奪創造』 不特定の人間の寿命を奪い、その寿命分の生物を創造するというもの。 僕は死神として生まれ、生物の創造、人間の行いを学び、今寿命を奪いにいく。 「準備はこんなものかな」 人間の寿命を奪う物は様々で、寿命を奪うナイフや銃。死を導く赤い糸、死を招く笛など種類、形は豊富にあり、 人間を好む神に死神の仕業だと悟られることのないよう殺し方を工夫できるようにしてある。 僕は人間を殺すものを用意した後、僕の上司がやっていたこととは逆に、その場からものを消し、部屋をでる。 この部屋は、僕の生まれた場所であり、僕の生活の場所となっていた。 見た目は人間のような家で、なんでも前世によって部屋の構造は違うらしい。 僕の場合、前世はあの忌々しい人間だったみたいだ。 でも、人間が、死神になるのはとても珍しく、滅多にいないそうだ。 僕の上司も、人間のように見えるが前世はカラスだったらしい。 らしい、というのは全身を覆う黒いオーラのせいで顔が隠れていて、実際に見たことがなかったからだ。 「行ってきます」 僕はここで過ごした日々を思い出しながら、懐かしさを感じつつ、そうつぶやいていた。
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