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小さな諍いから喧嘩になり
お互いに傷つけあった
「ごめん、亜美、僕が悪かった」
悪くもないのに謝ったあなた
でも、意地をはってしまった私
結局、二人は別れることになる
あなたは、私が初めて本気で好きになった人だった
あれから1年半
時は幻のように過ぎ
二人の共通の友人のさとみから、あなたに新しい恋人ができたことを知る
そんなあなたに対抗するように、私は何人もの男と付き合う
でも、私の中の喪失感を埋めることはできず
行き場のない後悔に苛まれるだけ
「会いたい」
「あなたに、会いたい」
今ならまだ遅くないと思い
もう一度二人でやり直したい、と書いたメ-ルを何度送ろうとしただろうか
でも、あなたの心の中に、もう私はいないかもしれない
そんな思いが、送信ボタンを押す手を止める
素直になれない私
まだ自尊心を守ろうとしている私
虚ろな風が心の中を吹き抜ける
秋が寄り添いはじめた頃
あなたがさとみと結婚したことを、さとみから知らされる
羽根をもがれた小鳥のように
私は蹲ることしかできない
時間(とき)に身を委ねるという、ありきたりの方法で
私も他の人と普通に結婚するのであろうか
それからどれほどたったであろうか
私が道を歩いていると
「亜美ちゃん…、だよね」
後ろからの声に振り向くと
そこには、あなたの姿があった
思いがけない再会に、私の心は乱れる
ぎこちない会話だけで、逃げるように別れた私
偶然の再会から1か月後
突然、あなたから電話があり
「今日、さとみと3人で飲まない?」と誘われた
私は悩んだが誘いを受け、指定されたバ-へ行く
そこに、さとみの姿はなかった
「さとみは、仕事で来られなくなった」
さざ波のようなざわめきが私を襲う
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