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躊躇なく扉をドンドン叩くと寝起きで鬱陶しそうな兄の姿があった。彼ははっと息を飲む。
「なんで…」
答えるよりも先に部屋になだれ込み、彼の唇を奪った。
目を見開き抵抗しようとする兄。そんなことしてももう駄目だよ兄ちゃん――。
手を伸ばし甘く触れさせた。彼は身じろぎするがそれを封じるかのように首筋に容赦なく噛み付いた。じんわりと血が滲む。
「痛っ、お前な」と声を上げられたがここで距離を置くつもりはない。
「ごめんね兄ちゃん、でも俺…」
――俺、ずっと兄ちゃんの事好きだったんだよ?
声にでていたのだろうか、兄ちゃんは分かってくれたのだろうか。
血の滲む場所を今度は優しくそして甘く包み込んだ。
チュと音を立て顔を離すと綺麗な華が咲いた。
「・・・これ、俺の印」
ふと見上げたときの艶かしい表情にそそられた。
――兄ちゃん…ほかの誰にも触らせないでよね、あぁ――やっと捕まえた。
心の中で呟く。そしてぎゅっと彼を抱きしめた。自分よりも背の高いはずの彼が小さく感じた。
ふと遠くで名前を呼ばれたような気がして今度はぎゅっと抱きつく。初めて呼んでもらえた名前だった。
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