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エピローグ
思いが通じ合ったことが夢のようだった。あれからは二人で暮らすようになった。
正直あの時に雅也が来なかったら、きっと閉じ篭ったままだったに違いない。
後々、“酔ってたからあまり覚えてない”と言った彼だったが、その伏せられた目が、赤くなった耳が嘘で無いことを教えてくれた。
俺は柔らかい彼の髪に手を伸ばすと、くしゃっとかき混ぜた。連動するようにもぞっと動く布団。顔を覗くがまだ起きていないようだった。そっと頬に顔を寄せ、彼を起こさないよう布団を抜け出した。
一人暮らしも長くなれば一通りの家事はだいたいは出来るようになる。1DKの小さな台所に向かうと朝食の支度を始めた。
初めの頃は指もしょっちゅう切っていたが、今ではお手の物だ。
昔から朝食は和食だった。流石に平日に朝から作るのは難しいのでパンで済ませることもあるが、今日は休日だ。彼が食べたがっていたものを用意する。
「--よし、出来た」
和食とは不釣合いのコーヒーも用意をする。いい香りが漂った。
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