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まだ寝ているはずの彼を起こしにいく。すやすやと寝息が聞こえてきた。昨日も遅くまでバイトをしており、帰ってきたのは日付を跨いでいた。一緒に暮らすようになってから、そのバイトは止めたら…と打診したが、恩があるからと止めようとはしなかった。彼の性格はよく知っている。これくらいで止めるような信念ではやらないだろうと、多少多めに見ている部分もある。
あまりチヤホヤされて欲しくない――と言ったら彼はどんな顔をするだろうか。
盛り上がった布団に手を伸ばそうとした時、中から伸びてきた手に腕を掴まれた。
「…おわっ!」
体勢を崩し、彼の胸にのしかかってしまう。
だか思いっきり乗られたはずの当本人はケロッとした様子で見上げてくる。
「おはよ、兄ちゃん!」
にんまり笑顔の雅也にしてやられたようだった。
「お前、まさかさっき狸寝入りしてたんじゃ!?」
え?と惚けた表情で笑う雅也。そんな表情もとても可愛いと思った。昔から可愛くて仕方なかった雅也。今度は彼の方から顔が寄ってきてチュッと重なった。
--あ!今日は俺の好きな甘い玉子焼きだね。
もぞりと起き上がりかけた彼の腕を引き上げ、立ち上がらせるとリビングへ移動する。
--俺、兄ちゃんの作った玉子焼き好きなんだよね!
自分の席に着くやいなや玉子を頬張った。
--美味しいー!
そう言って顔を綻ばせた彼に目を細めた。
―THE END―
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