プロローグ

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彼の髪の間に手を差し込む。その痛みはくすぐったいような甘いような感覚を生み出した。 チュと音を立て離れたかと思うと、弟の熱い視線が突き刺さった。 「…これ、俺の印」 舌なめずりをした彼は誇らしげにニヤっと笑う。その表情に胸が高鳴り溺れて行く。 もう知らない、どうにでもなってしまえ――。 気が付くと俺から唇を寄せていた。 「…也」 抱きしめる腕はあの頃のような軟いものではなく、しっかりと俺を抱きすくめる。 “やっと捕まえた――” そんな声が聞こえたような気がした。心奪われている俺の耳にははっきりと届かない。 そして再びどちらからともなく唇が重なった。
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