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「わー父さん、この子指掴んだよ!!可愛いね!!」
今まで兄弟がいなかった俺にとって、こんなに小さくて可愛い子が弟になるなんて純粋に嬉しかった。
父親は笑いながらやさしく頭をなでた。
「ははっ、そうか!大事にするんだぞ」
俺は父親を見上げ、満面の笑みで言葉を返した。
「うん!」
彼とは出会ったその日から“兄弟”として過ごした。生まれた時から血を分けた兄弟だったかのように。そんな俺たちを父親と新しい母親は微笑ましく見ていたんだと思う。
家族4人で過ごす事が慣れてきたある日、彼はお気に入りのサッカーボール風の柔らかいおもちゃで遊びながらふと声を発した。
「ねぇ、おみちゃ!」
ボールが転がり中の鈴が鳴る。
――リリーン…――
まさか自分の事だとは思わなかった。しかし、母にはしっかりと伝わったらしい。
「きゃあー!今呼んだわね!弘臣の事”おみちゃ“って!」
この時には、彼女も俺の事を普通に呼び捨てで呼んでいた。
――え?何の事だかさっぱり分からない。
「呼んだのよ、今!!」
目を輝かせ話す母は初めて見る姿だった。
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