23人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
こいつ分かってるのか。
「っ…お前…んっ」
目の前には酒のにおいをぷんぷんさせたヤツがいる。
何故こんなことになっているのか。頭がぼーっとするのは酒のにおいに酔ったのか、こんな時間だからなのか、それとも…。
「…んぐっ!!」
――こんな力強かったのか、こいつ。
頭の端で考える暇がある分、まだ理性は残っているようだった。
「はぁ……どこ触ってんだ…」
なんとか言葉を振り絞って声を上げるが、時間が時間だけに大声は出せない。
押し返そうと力を込めた瞬間、首筋に激痛が走った。
「痛っ、お前なぁ!」
噛みやがったな、と怒りをこめようとした瞬間、
「ごめんね兄ちゃん、でも俺…」
潤んだ瞳に見上げられ目を奪われる。
「…っ」
頼むからそんな目で俺を見るな。俺がどれだけ耐え忍んできたと思ってるんだ。
ジンジンしているはずの首筋が淡い熱を帯び始める。
弟なのに弟だからこんなのはダメなのに。頭では分かっていたはずなのに…。
彼の瞳から目が離せなかった。
「…ひゃっ」
また首筋に顔を埋められると先程とは違った痛みがやってきた。
「お前…それは止めろ…っ」
最初のコメントを投稿しよう!