空の向こうに

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「そうかもしれないけど、山登るなんて聞いてない。わかってたら、もっと動きやすい格好をしてきたのに……」 昨夜、突然真也から二人で出かけようと連絡が来た。 気心の知れた幼なじみとはいえ、年頃になるにつれて男女というものを意識しはじめて、二人だけで出かけたり遊んだりすることはなくなっていた。 だから、二人でと言われた時には驚いたし、いくら相手が真也とはいえ、服も真也の隣に並んでも恥ずかしくないようにと、この秋の新作として調達したばかりのロングスカートに少しヒールのある靴を履くことに決めた。 ちょっと背伸びしておしゃれして、ドキドキしながら待ち合わせ場所に向かったのが、今朝の話だ。 ところが、どこに連れていってくれるのだろうと期待を膨らませながら、合流した真也の後ろに続けば、どんどん山道に入っていき、今に至る。 「あー、ごめんごめん。その格好じゃあ、歩きにくかったよね」 今更かよ! とツッコミたくなったが、真也が少し抜けているのは今に始まったことではない。 むしろ、それでこそ真也っていう感じだし、こういったところがなかったらむしろ真也じゃない。 「もう、これだから真也は。で、何でここに私を連れてきたの?」 いくら真也が天然とはいえ、まさか山登りして、はいおしまいってことはないと信じたい。     
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