5人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど、そんな真也に呆れている間にも、私が話を完全にそらす前に真也には本題に入られてしまった。
「……美結も聞いたんだよな」
「なに?」
「俺が、転校する話」
「……うん」
ずっと続いてきた腐れ縁だけど、それに終止符が打たれようとしていたことを、私は知っていた。
「お父さんの都合で、ニュージーランドに行くんでしょ?」
「……俺、英語しゃべれないのにな。日本に残りたいって言ってもあの親父、頭硬いから家族で行くって聞かなくて」
真也のお父さんには、運動会等の行事で何度か会ったことがある。
すごくきっちりとした、硬派なイメージのお父さんなら、確かにそう言いそうだなと思わず笑ってしまう。
「……美結はその、寂しくないの? 俺が、ニュージーランドに行くって聞いて」
本当は寂しい。とてつもなく。
最初は、出所のわからないウワサだったから何とも思ってなかったけど、それが本当のことらしいと聞いたときは、胸にぽっかり穴が空いたようだった。
そのくらい、真也は私にとって大きな大きな存在になっていたんだ。
「……寂しいわけないじゃん。むしろ、いつまでこの腐れ縁続くのって思ってたくらいだし、良いんじゃない?」
寂しいなんて言ったって、どうしようもないことはわかっている。
真也を困らせるだけだ。
最初のコメントを投稿しよう!