空の向こうに

5/8
前へ
/8ページ
次へ
だけど、そんな真也に呆れている間にも、私が話を完全にそらす前に真也には本題に入られてしまった。 「……美結も聞いたんだよな」 「なに?」 「俺が、転校する話」 「……うん」 ずっと続いてきた腐れ縁だけど、それに終止符が打たれようとしていたことを、私は知っていた。 「お父さんの都合で、ニュージーランドに行くんでしょ?」 「……俺、英語しゃべれないのにな。日本に残りたいって言ってもあの親父、頭硬いから家族で行くって聞かなくて」 真也のお父さんには、運動会等の行事で何度か会ったことがある。 すごくきっちりとした、硬派なイメージのお父さんなら、確かにそう言いそうだなと思わず笑ってしまう。 「……美結はその、寂しくないの? 俺が、ニュージーランドに行くって聞いて」 本当は寂しい。とてつもなく。 最初は、出所のわからないウワサだったから何とも思ってなかったけど、それが本当のことらしいと聞いたときは、胸にぽっかり穴が空いたようだった。 そのくらい、真也は私にとって大きな大きな存在になっていたんだ。 「……寂しいわけないじゃん。むしろ、いつまでこの腐れ縁続くのって思ってたくらいだし、良いんじゃない?」 寂しいなんて言ったって、どうしようもないことはわかっている。 真也を困らせるだけだ。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加