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だけど、真也は反発しようとした私の口にそっと人さし指を添えて黙らせる。
「俺が居なくなっても、男でも女でもいいから美結が大切に思える人を見つけて、幸せになってな」
「真也……」
男でも女でもいいから私が大切に思える人を見つけてって。
私にとって、その大切な人は真也だったのに。
「だっておまえ、友達、俺くらいしかいないだろ?」
思わず胸の痛みに泣いてしまいそうになった時、そんなことを言われて涙は引っ込んでしまったけれど。
「いるわよ、余計なお世話だ!」
でも、もしかしたらこんな意地悪も、私が泣きそうになったのを察して言ってくれたのかもしれない。
「……遠いね、ニュージーランド」
南半球じゃん。季節も真逆だし。
何より海外なんて……。
「遠いか遠くないかって言われたら遠いけどさ、俺が消滅するわけじゃないんだから」
ははは、とやっぱり彼はヘラりと笑う。
「生きてる限り、どこにいたってこの空の下にいるだろ? 俺も美結も」
「空は繋がってるって言いたいの?」
真也にしては、クサイセリフだ。
「違うよ。死ぬわけじゃないんだから、笑顔で送り出してよって言ってるの」
「え?」
「だって美結、今にも俺が死ぬみたいな顔してるんだもん。違うから。生きてたらさ、きっとまた会えるよ。だから、最後くらい笑顔見せてよ」
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