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私は、上手く笑えてるだろうか。
涙が溢れそうになりながらも、ニッと両の口角を引き上げた。
真也はそれにヘラりといつものように軽い笑みを浮かべてくれた。
*
その翌日にはもう、真也は学校には来なかった。
予定より引っ越しが早まったんだと、先生は真也から預かった別れの手紙を読んだ。
ポツンとあいた、空っぽの真也の席。
それがもう、真也はここにはいないことを示していた。
きっと、私と真也は同じ気持ちだったのだろう。
お互いに幼なじみで大切な人。
そして、それ以上の感情を持っていた。
それはきっと、恋だったんだと思う。
だけど、私たちはこれで良かったんだ。
お互いに、相手に幸せになって欲しいから。
恋人という形で縛るのではなく、相手の幸せを想うことを真也は望んでいるように思ったし、私もそれを望んでいた。
真也は、元気にしてるかな。
生きている限り、同じ空の下にいると言った真也は、今もまたヘラりと笑っているのだろうか。
あれから三ヶ月が経って日本は冬になったけど、あの日の約束はまだ守れそうにない。
真也よりも大切な人なんて、そう簡単に見つからないよ。
でも……。
真也が居なくなった直後には少し泣いたけど、毎日幸せに過ごせるように笑顔で頑張ってるからね……。
あの日よりも冷たい風が頬を撫でる。
そして空を見上げた。この空の向こうにいる、遠く離れた幼なじみを想って。
END
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