先輩と見る町

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山の山頂から見る町は小さくて、神様になった気分だ。 昨日、雪が降り白い世界に包まれている。 「先輩、去年もこの場所で写真撮ってましたよね?」 どうして今年も同じ場所で撮ってるんだろう。 「変わってないと思うけど、去年とは違う町が撮れるんだよ」 シャッターを切りながら、先輩は白くなった町を撮っている。 なにかに没頭している先輩を見るのは、僕は好きだ。 「建物が新しく出来てたり無くなってたり、天気によって写り方も違うからね」 「なるほど…」 たしか去年は曇り空だった。 今日は、雲も無く太陽が町を照らしている。 数回シャッターを切ると、カメラから顔を離す先輩。 「先輩」 「ん?」 カシャッ。 僕を見ようとしたタイミングでシャッターを切る。 「えっ、い、今写真撮った?」 先輩は、僕がカメラを持っていることに驚いている。 不意打ちをねらったのだ。 「さっき言ってたように、先輩も町のように変化していますよ」 人も年を重ねるとともに変化しているのだと思う。 先輩と出会って二年。 出会った時と違って、明るくなり笑顔が増えている。 「変化していく先輩を撮りたくて…、それに…雪風景と似合っていて綺麗です」 「な、なに言ってるのよ、君は」 顔がだんだん赤くなって照れる先輩。 照れてる姿が可愛らしく、まるで暖炉のようで僕の心を暖かくしてくれる。 「君は、そういうセリフをさらっと言うよね…」 「僕は思ったことを言ってるだけですよ」 お互い白い息を出しながら白い町を眺める。 これからも、変化していく先輩を撮っていきたい。 初めて撮った写真だけど、うまく撮れてるだろうか。 「私も、君の写真撮らせて」 「えっ」 カシャッ。 先輩を見た瞬間、シャッターを切られた。 「さっきのおかえし、これでおあいこだね」 白い世界で、満足そうな顔で先輩が笑っていた。
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