彼女と邂逅した彼は、彼女のことを好きになった

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 だからまた疎まれる。  幸いなのか分からないが、僕はそのとき十二歳に達していなかったから、捕まることも、射殺されることもなかった。  しかし、自分が殺人兵器だということは知っていたし、理解していた。      だから僕は樹海に移動した。      樹海はいい。  自殺のスポットとされて、しかも自殺志願者以外が入ってくることはほとんどない。樹海に入れば、道に迷って餓死してしまう可能性があるからだ。    そして……自殺志願者だって、僕の近くに来るだけで、死ぬ。人間に対しては例外なく殺してしまうのだ。  だから、すぐに死にたい人間は、樹海に来て僕という存在のもとまで近づく。それだけで死ねるからだ。それも“多分”、安楽死で死ねる。  多分といったのは、亡くなった人に痛かったのか聞けないから。そして安楽死で亡くなる確信にはもう一つあって、それが経験則だ。  何人も僕自身の体質で亡くなってしまったが、そのときに苦しいといった声を上げずに死んでいたのを確認できたからだ。    日本は自殺を許さない、赦さない。海外に安楽死はあるのに、日本にはない。  だから自殺するために樹海へ行く人間は多くいる。     
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