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ライトに照らされた事で電車の接近を感じたナツは遂に平常心を保てなくなった。
「おい! 助けてくれ! 」
ナツはホーム全域に響き渡るくらいの声で叫んだ。しかしその声は電車の音に阻まれて、宙に消える。
「おい!誰かぁ! 」
その時だった。群衆の中にいたサツキと目があう。サツキはナツを見て唖然とした表情をしているように見えた。まさかナツが転落した人物だとは思わなかったのだろう。
サツキがこちらに駆け寄り、ナツは安堵で目から涙が零れ落ちそうになる。
良かった。これで助かった。
電車の先頭車両はもう目と鼻の先。ナツは最後の力を振り絞りホームによじ登ろうとする。手は痛く、感覚がない。
群衆の中にいたサラリーマンや男子学生達がナツを助けようと懸命に手を差し伸べる。
「もう駄目だ! 離れろ! 」
突如群衆の中にいたサラリーマンが吠えた。
ナツはその声に反応するかの様に横を向くと、白い光に包まれた。
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