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昂平はいきなり目が覚めた。
「はあ?」
何を言い出すのだろう、このひとは。
驚いて言葉を失う昂平に、しかし、永瀬はいつもと全く同じテンションだ。
「だって僕、君のことが好きで、離れたくないなぁって思うんだよね」
君がここに泊まりに来てくれて、この数日本当に幸せでたまらなかったし。
「君もこうやって僕と一緒にいるの、心地よさそうだし」
やっぱりダメかなぁ?
瞳を覗き込まれ、昂平はソワソワと落ち着かない気分になる。
確かに心地いいのは認める。
一緒に寝るだけで、ものすごく満たされた気分になって、なんかもう毎日すごく快調なんです。
でも、一緒に住むっていきなり過ぎません?
つまり、それって同棲……ってことですよね?
俺まだアンタに告白すらしてないんだけど。
へらっと気の抜けた笑顔を見せるそのひとは、昂平の返事を待っている。
そんなこと、明日契約ってときに急に言われても困るに決まってるし!
そんなすぐ、じゃあ一緒に住もうとか返事できるかっての!
「急にそんなこと言われても、困るに決まってるだろ」
そう言うしかない。
永瀬はそうだよねーと普通に相槌を打った。
「それはわかってるんだけどねー、昂平君が離れていっちゃうって思ったら、どうしても離れたくなくなっちゃって」
それに、と彼は続ける。
「困るってことは、一緒に住むのは嫌じゃないってことだよね?」
即否定じゃないもんね?
言われて、昂平は一瞬言葉を詰まらせた。
正論だ。
確かに、すぐに却下するという選択肢が全く出てこなかった。
迷ったから困ったのだ。
翌朝、昂平は不動産屋に「契約は少し待って欲しい」と電話するはめになっていた。
その不動産屋さんは、とても良心的で親切な担当さんだったので、残念そうに「待つのは構わないけど、もし他の人が先に決めちゃったら、確保しておくことは難しいですよ」と忠告してくれたけれど。
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