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一緒に住みたい、と言い出したこのひとは、そもそも自分をどう思っているのだろう?
好きだ、とは折に触れて言われる。
見つめられるその視線にも、触れてくるその手にも、いとおしいという気持ちが溢れているように感じるので、きっと本当なんだと思う。
でも、毎晩1つのベッドに寝て、抱き合って眠っていてもそれ以上のことはしてこようとしない。
触れるだけの優しいキスをたまに降らすぐらいで。
いつかのように、熱を帯びた身体の一部が当たってドキッとすることもないし、どういう意味の「好き」なのか、全然わからなくなってきている。
それでも「一緒に住みたい」と言う。
「好きだから離れたくない」と。
昂平は、今日は不動産屋に行かないことになったので、永瀬の研究室で雑用を手伝いながら、パソコンにかじりついている永瀬の横顔をチラチラ伺う。
永瀬が視線に気づいたのか、顔を上げた。
「お腹空いた?お昼食べに行く?」
「いや…えーと、うんまあ、空いたかも?」
ぽやんと微笑む永瀬は全くいつもと変わらない。
「一段落したから、お昼食べがてら、不動産屋さんに行ってみる?二人で住む部屋探しに」
いつのまにか二人で住むこと決定?
心の中で昂平は突っ込んだ。
「あのさ、俺まだアンタと住むって決めたわけじゃないし」
「うん、そうだけど、部屋見てみないと比較できないでしょ?」
にっこり笑う永瀬の意見はごもっともだ。
一事が万事こんな感じで、なんとなく永瀬の思うツボにはまっていってる気がするけれど。
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