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冬休みが終わり、永瀬と昂平はお互い急に忙しくなった。
永瀬は、期末試験の準備やら新しいゼミ生の選考やら、卒論発表会の準備やら、年度末に向けた雑務が後から後からわいてくるようで。
昂平も、バイト先は入試シーズン真っ只中でバタバタしているし、自分の期末試験の準備やレポートやらで、永瀬の研究室に通う暇を見つけられなかった。
冬休みが終わる前には、寮のボイラーの修理も終わりシャワーのお湯は普通に出るようになっていて、昂平は寮に戻っていた。
永瀬からは帰って欲しくないというか、ずっといて欲しいようなことを言われたが、着替えや私物が寮にある以上、そのまま永瀬のマンションに居つくわけにもいかず、とりあえず帰ったのである。
そのときは、冬休みが終わるなり、こんなに会えなくなるなんて思ってもみなかった。
もうじき2月になってしまう、という段階に及んで、さすがに昂平は危機感を覚えた。
迷っているうちに、当然決めかけていた学生アパートは他のやつにかっさらわれ、周りはどんどん新しい住居を決めていく。
このままでは、自分は4月から住所不定だ。
それに、実のところ、永瀬に会えないということが、こんなに自分にダメージを与えるとは思っていなかった昂平である。
そう、彼は、永瀬に会えなくてダメージを受けていた。
忙しいことによる疲労や睡眠不足もあるのかもしれない。
だけど、それだけではなく。
一緒に住めば、このさみしさから解放されるのだろうか?
昂平の足は、永瀬の研究室に向かっていた。
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