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永瀬は荷物をそれなりに整理すると、積み上がった本の上にノートパソコンを置き、フィールドワークの資料を纏め始めた。
「昂平君はテキトーに寛いでてね。って言ってもテレビもなくて申し訳ないんだけど…」
へらっといつもの笑顔で彼は言ってくれたが、確かに何もない部屋でただ寛ぐのは難しい。
とはいえ、昂平は泊めさせて貰っている身分である。
もちろん、そんな贅沢を言える立場ではない。
1つしかないそのベッドにごろりと横になり、スマホゲームでもやろうかと画面を開いたが。
ベッドに仄かに残る永瀬の匂いに、何もせずただ浸っていたくなって、枕元にスマホを置いた。
瞳を閉じると、そのひとに柔らかく抱きしめられている心地になる。
温かくて気持ちいい。
ウトウトと眠気に襲われる。
「昂平君?寝るなら先にシャワー浴びたほうがいいよ?」
永瀬の声がする。
「疲れてるなら湯船にお湯張ろうか?」
「んー……」
昂平は、完全に寝惚けていた。
まだ夢見心地でウトウトしていたい。
だから、言い訳した。
「寝てないし……におい、嗅いでるだけ…」
「におい?」
不思議そうに聞き返され、半分眠りながら答える。
「アンタの…」
数秒の沈黙が流れた。
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