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リュウトが由佳に出会ったのは半年前だ。
その日、いつものように、荒れた高校を抜け出し、リュウトはゴミ集積場をぶらぶらと歩いていた。
上層界で廃棄され運ばれてきたゴミの山の中から、金になりそうなものを探し、拾って、それを業者に売り渡す。リュウトが小さい頃から行っていた小遣い稼ぎの一つだ。
一番金になるのは、廃棄されたコンピュータや電子端末だった。回収した業者がそれを分解し、部品を使い回して新たな製品に組み込むらしい。あるいは、それが「上」の世界の廃棄品であれば、中に入っているデータが金になることもある。
廃棄場には不快な臭気が立ちこめる。むき出しの壊れた金属が無造作に積まれているので、歩き回るだけで怪我をするのは日常茶飯事だ。
いつものようにゴミの山を物色していたとき、雑然とした廃棄場に突然、はつらつとした少女の声が響きわたった。
「見つけた!」
他の人間が何をしていようと、いつものリュウトなら気にしなかった。思わず顔を上げたのは、この陰気な廃棄場に似つかわしくない明るい、朗らかな声が、あまりにも聞き慣れなくて耳に触ったからだ。
一体ここで何を見つけるとそんなに嬉しそうな声を上げるのかと思えば、同じ年ぐらいの、セーラー服を着た少女が、こちらをまっすぐに見つめていた。
「あなたが、アノニマス=サーティーンなのね!」
それは、リュウトの見たことのない人間だった。
白い肌は、このひどく汚れた大気の中で、太陽の光を跳ね返し輝いているように見える。ポニーテールが元気よく揺れていた。意志の強さを感じさせる視線を向けられると、まるで、銃口を向けられたのかと思うぐらい、気圧された。
「あ……え……?」
狼狽して何も言葉にならないリュウトに、少女はきらきらとした笑顔を向ける。そして、右手の人差し指で、リュウトの胸元を指した。リュウトは視線を落とす。制服の胸ポケットに、つい一週間前にここで拾って使っている、携帯の端末が入っていた。
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