第03講義 大恋愛(情報化の歴史 第25節 大恋愛機能の設定)

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 大きな船。  その船の舳先。  男女が抱き合うようにして、海に向かってポースを取っている。  危険だ。なぜあんな所にわざわざいるんだろう。と、見ている誰もが思った。  しばらくするとその船に海水が入ってきた。船が何かにぶつかったのだ。  人々が右往左往する。  そして男女は海に投げ出される。  女は浮いており、男は沈んでいく。  はい、ここまで。  これが今から約250年前、ホモサピエンスが楽しんでいた「映画」というデータです。ホモサピエンスは映画館という施設に集まって、集団でこのようなデータを閲覧していました。それが彼らにとっての娯楽でした。  そして、この映画というデータの中で扱われていたテーマが「大恋愛」です。先ほどデータの中で雄の個体と雌の個体が出てきましたが、この2つの個体の関係性が「大恋愛」です。先の講義で、ホモサピエンスの生物としての特徴は、集団で同じ幻想を信じることができる「共同幻想能力」だと説明しましたが、この「大恋愛」もその中の一つです。映画という娯楽は繰り返し繰り返しこのテーマを取り扱い、プロパガンダが行われていました。その結果ホモサピエンスは「大恋愛」に憧れを抱き、自分も「大恋愛」をしたいと願い、オスとメスが互いに共同幻想能力を発揮した結果、有性生殖に至り、子孫を残し、死んでいきました。
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