第01講義 炎上供養(情報化の歴史 第13節 情報交換の近代)

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 ホモサピエンスは生物ですから、肉体を持っています。肉体の内部にメモリーがありましたが、せいぜい1ペタバイト程度しかありません。個体毎のとても小さなメモリで記録した情報を元に、個体同士で直接情報交換していました。これが「情報交換の原始時代」です。ここから近代を迎えると、外部メモリーは無限大に増大し、かつ、個体から種全体への情報発信が可能になりました。ホモサピエンスは熱狂して発信を始めます。各個体に配られた端末からインターネットにアクセスし、激しく発信を繰り返すようになりました。ところで、ホモサピエンスは各個体が仲良く暮らしていけるように仕組みを作っていました。これが「社会」であり、当時の仕組みは「民主主義」と呼ばれていました。集団を代表する個体が議論をして多数決で決まりを決め、それを全個体が守るという仕組みです。情報交換の近代化が行われた当初は、この仕組みがもっと効率的になるのではという期待が持たれたようですが、みなさんもご存知の通り、そうはなりませんでした。当時SNSで特定のアドレスにアクセスが集中することを「炎上」と呼んでいましたが、情報交換の原始時代を生きていたホモサピエンスにとっては、近代の情報交換の方法がわかりませんでした。彼らは個体が持つ感情をインターネット上で無制限に増幅させ、炎上を繰り返しました。原始時代には、個体に溜まったストレスを発散させるために「祭り」というイベントが設定されていましたが、その癖は近代化を迎えても治ることはありませんでした。ストレスを溜め、それを発散する。過剰と蕩尽。ホモサピエンスは情報交換の近代化を迎えても、その性癖を克服することができませんでした。
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