第01講義 炎上供養(情報化の歴史 第13節 情報交換の近代)

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 先回の講義でもお話ししましたが、ホモサピエンスが種として大成したのは集団で1つの強い考え方を信じ込むことができたからでした。「虚構共有能力」もしくは「共同幻想能力」とも言います。その例が「宗教」です。ホモサピエンスは個体として個々に自我を持つ生物でしたが、その個体を創造し、全体を総括する存在がいるという考え方。自我を創造する存在というのは自己矛盾を含む驚くべき設定ですが、この存在を「神」と呼んでいました。そしてその虚構を集団に信じ込ませるのが宗教でした。宗教は成功し、その結果ホモサピエンスは大成しました。しかしこれは情報交換の原始時代だったから成功したとも言えます。限られたメモリーを限られた範囲でしか共有できない原始時代には、宗教を個体に信じ込ませるのは容易でした。個体が得られる情報が限られていたからです。しかし情報交換の近代を迎え、無限のメモリーにアクセス可能になり、個体から種全体への発信が可能になります。虚構は細分化を余儀なくされ、大きな存在ではいられなくなりました。近代化を迎えた当初、先ほど説明した「炎上」が多発し、ホモサピエンスは滅びの道を辿ります。宗教はこれを解決しようとします。しかし既にその時には、彼らの最大の特徴であった虚構共有能力が薄れてしまっていました。宗教という虚構が共有できなくなってしまった訳です。情報交換の近代化はホモサピエンスに虚構共有能力からの卒業を促しました。しかし、ホモサピエンスは彼らが生物種として抱えていた過剰蕩尽の課題を乗り越えることができませんでした。このようにして近代化はホモサピエンスと共に終了し、時代は現代に移っていきます。 END
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