爆破予告 181005

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爆破予告 181005

 あと1時間。あと1時間で誕生日が来る。俺は23になる。無職である。引きこもりである。役立たずである。自宅警備員である。座右の銘:「働いたら負け」。けだし、名言である。この名言を考えた人はすごいと思う。すごいとは思うが。働いたら負け。働いたら負ける。それはいい。それはいいとして。では、どうしたら勝てるのか。問題はそこだ。働かなければ勝ちなのか。ということは俺は勝者だ。今の俺、人生の勝者。そうか。そうなのか。本当にそうなのか。「働かなければ勝ち」という言葉は「働いたら負け」という名言の裏返しだ。しかしそれは十分ではない。必要条件は満たしているが、十分条件を満たしていない。十分条件を満たすためには言葉を加える必要がある。多分それはこんなかんじだ。「働かなければ(そして食っていければ)勝ち」。こうなるともう名言でも何でもない。何が重要って、結局この括弧内が重要だ。だからこの括弧内を満たすために人は働かざるを得なくなる。つまり、負けるのだ。働いて負けるのだ。堂々巡り。この堂々巡りを俺はずっとしてきた。この部屋で。俺はインターネットを駆使し、世界の知恵を使った。しかし。名言を生きる術は見つからなった。俺が引きこもりになったのは中学3年から。だからかれこれ7年間。友達がいない訳じゃない。ネトゲでパーティを組む友達ならいる。しかしどうせ世間一般にはそういうのを友達とは言わないっていうのだろう。まあいい。孤独だ。俺は孤独。俺はこの部屋でネットを通じて全世界とつながっている。そして孤独。孤独はいい。孤独は好きだ。他人はアホだ。ろくな考えを持っていない。その上俺を傷つける。知識はネットから得る。判断は自分でする。だから他人は不要。他人との関わりは無駄。だから俺は孤独を選んだ。自ら引きこもりの道を選んだのだ。そして7年間。俺は思索を続けてきた。座右の銘を実践する道だ。答えは。その答えは出なかった。そして期限が来た。タイムリミット。俺は思索の期限を22歳迄と設定していた。
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