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「……早速だけど、俺の未練を叶えさせてくれ。」
「っ……やだよ……。」
「欲張るな、って言ったろ?」
だって、叶えちゃったら消えちゃうじゃない。
そんなの嫌……だけど。
欲張るのも、ダメ。わたしには難しいよ……。
「……死んでからになっちまって悪かったな。」
「……え?」
「--……お前のことが、ずっと好きだった。」
その途端、彼の輪郭が形をなくしていく。
ずるい、ずるいよ。
そんなこと急に言われたって。
どうしよう、このままじゃ消えちゃう……!
「待って、待ってよ!わたしも、キミのことが--」
そこまで言いかけて、最後までは言えなかった。
……もう、そこにはキミの姿はない。
最後に見えたのは、「わかってる」とでも言いたそうな彼の笑顔だけ。
「--……好きだよ。勝手にいなくなるなんて、ずるいじゃない。」
どうしようもなく好きだったキミは、音もなく消えた。
突然、何の変哲もない日に、不意に。
ひかりと望(のぞむ)。
それがわたしたちの名前。
もしかしたら、わたしはキミの光になれていたのかもしれないし、なれていなかったかもしれない。
ただ、キミはわたしに、わたしはキミに望まれて生きていた。
それだけは、確実に分かってる。
いや、そうではないかもしれないし、それは誰にもわからない。
光を望んでいたのかもしれないっていうことも、今になって気づいた。
……光は、望まれるべきものだから。
キミが言った通り、欲張らずに生きていくよ。
だから、大丈夫。
安心して、永眠っていいからね。
「……ありがとう。」
キミに出会えて、ほんとうによかった。
END.
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