ブラックキャットを追い駆けて

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 ブラックキャットをいただきに参ります。  こんな文句のチラシが街中にばらまかれた。ミハタ動物ショップも例外ではなく、店主の三畑みな実は考えあぐねた末、最近顔をよく見るようになった高橋を臨時店員として雇い入れた。理由はただ一つ、飼い犬のけいたとヨウムのすすむが拒まなかったというだけ。当然、周囲の人間からは反対されるが高橋の働きぶりは真面目そのものだった。  そしてチラシの言葉通り、黒い猫がさらわれる。飼い主も猫も三畑の知己だ。第二第三の猫誘拐事件も目の当たりにする。「街にいる子は、みんなウチの子」。お人好しで動物たちを放っておけない性格である三畑は、事件を解決できないかと独自に動く。  自分の店は生体展示がなく、同時経営するペットホテルにも黒猫はいない。ひとまずは安心して、店の客や、動物病院の医師、はたまた懇意のブリーダーやペットシッターから、情報を集める。  そんな中、街の一企業であるツナ缶製造販売会社の「クロキ」の黒木家が、黒猫収集家であることを突き止める。しかも、経営者である黒木達造の妻、黒木勇実子は顧客の一人だった。探りを入れるも、上手くかわされてしまう。さらに、黒木夫人の黒猫がさらわれて、逆に三畑があらぬ疑いをかけられてしまう。  窮地を救ったのは高橋だった。高橋は、黒猫をさらったのが黒木夫人であること、動機はミハタ動物ショップで飼い猫に対する愚痴をこぼす飼い主から猫を開放すること、さらに黒木夫人の猫がさらわれたのは、首輪についていた会社の会計データが原因、かつ犯人は黒木達造であることを指摘する。  事件が解決し、大団円かと思われた夜、三畑はヨウムのすすむに「オキロ、ニゲロ」と騒がれて目を覚ました。店の方からの物音に駆け付けると、ペットホテルの猫をさらおうとする人間に出くわし、それでも預かった猫のために抵抗したところで、大勢の人がなだれ込んできた。警察と高橋だった。実はペットホテルの猫の首輪に高価な宝石がついており、一連の事件に紛れて誘拐をたくらんだ泥棒がいたという。そして、その一人が高橋だった。だが高橋は人の好い三畑にほだされ、泥棒を捕まえるために動いていた。「ワルの上にはワルがいる」と嘯く高橋は、警察に逮捕されそうになるが、「あなたもウチの子」と三畑がとりなして、事件は終息した。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!