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被殺害保険
「殺害・・・保険・・・ですか?」
「いいえ。 正しくは、被・殺害保険です」
被殺害保険。
それは、10年も添い遂げた妻からようやく「子供ができた」との報告を受け、すぐさま保険会社へと足を運んだ男はにとっては馴染みのない言葉だった。
「えーと。 何ですか? それは? 生命保険とは違うんですよね?」
「そうですねー。 違うには違うんですが、全く違うということも無いですねー」
男の質問に営業マンは殊更もったいぶって答え、さも詳しく聞いて欲しそうにチラチラ視線を送ってくる。
「気味悪い奴だな」男は素直にそう思ったが、いつまでたっても話を切り出さない営業マンを見て仕方なしに「それは、どういうものですか?」と尋ねると、営業マンは嬉々として説明を始めた。
「最近の世の中をどう思いますか? 非常に物騒でしょう? 親が子を殺したり、子が親を殺したり、私怨ふくんだ復讐劇があるかと思えばあれば、逆に無差別に人を殺して回る通り魔だっています」
男は適当に「はぁ」とか「そうですね」と相づちを打つと、営業マンはどんどんヒートアップする。
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