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不明瞭な君と、ずっと、これからも
昔から俯くのが癖だった。
気が弱いのに目つきが悪い人相のせいで、要らない反感ばかり買っていた。
友人や担任、親にすら外見で内面を判断され、次第に人の顔を見る事が出来なくなっていた。
歩く時も俯いて、他人と視線を合わせないようにした。
そんな暗い自分の歩く先、数歩先を、いつからか半透明の女の子が歩くようになった。
自分よりだいぶ幼い少女は気が付くと現れる。
最初見た時は自宅の廊下だったので、半透明だったこともあり幽霊だと慌てたものだが。
彼女は何も害を与えない。自分の歩く先を頼りなさげな歩調で先導するだけだった。
いつの間にか現れ、消える彼女は、案外早く自分の日常に溶け込んだ。
彼女がふらつくと思わず視線をそちらに向ける。
その時だけ、己の視線は他人と、世界と向き合った。
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