第1話 ありふれた日々とノラ猫

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まぁ一人暮らしの俺には、アイツの家政婦ぶりは助かるから、ご奉仕、と聞いたら黙るしかない。 掃除洗濯だけで終わってる時もあれば、晩飯までちゃんと準備してある時もある。 疲れて帰ってきて、暗い部屋に電気をつけた瞬間、テーブルの上が賑わっていると不思議と疲れが抜けた。 晩飯がある時には必ず置き手紙つき。 一度は、 『ダーリン、おかえり』 だ。しかも見事なハートで締めくくられていた。 そして俺は、シュウのそんなバカさ加減に何度か癒されたりもした。 仕事はキツイ。 営業なんてやるもんじゃなかった。 そう思うのは、なかなか上がらない成績のせいもあるだろう。 だいたい努力したからと言って売れるもんじゃないし。 どんないい接待したって裏切りはつきものだ。 ちょっとした人間不振に陥りそうな時に、気まぐれなシュウの存在は時にイラつき、時に癒されるものだった。
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