第一章 良く知らない人にはついて行ってはいけない

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第一章 良く知らない人にはついて行ってはいけない

 思い返してみれば、去年も同じことをした。  冬の間に忘れてしまった暑さを身に浴びながら、町中を歩き回り、ゴミを拾った。一体これは何の苦行なのかと強く疑問に思った覚えがある。しかし、高校に入学したばかりの身だ。不平を口にすることよりも、目の前にあるゴミを拾うことに熱心だった。殊勝な行いだったと今更ながらに思う。  そして今年である。ゴールデンウィークも明けて、長期休みの余韻も霧散した五月三十日。高校二年生となって丸二カ月経った。本年度も例の学校行事が行われるらしい。  ゴミゼロ運動。担任教諭が何度も口にしていたため、やっとこのゴミ拾い活動の正式名称を知ることができた。全校生徒が学区内に散らばり、ゴミを求めて彷徨うのだ。健全なのかそうでないのか良く分からない。  想像するところ、五月三十日、五三〇、ゴミゼロ、ということなのだろう。しょうもないダジャレである。  自治体が推奨している正式な活動なのか、当校の誰かの思い付きなのか、知る由もないが、とにもかくにもゴミを拾わなくては始まらないし、終わらない。逃れる術は無い。  なんのためにゴミを拾うのかは明確ではないが、訊いたところでお得意の『地域に根付いたボランティア活動』などとのたまわれるに違いない。こういうのは深く考えたらダメなのだ。世の中にはどうしようもないことはいくらでもある。  希望は雨が降ることであった。雨天であればこの活動も中止。ゴミを拾う機会も消え失せる。心から雨を祈っていたが無駄だった。それどころか昨年よりも上天気に恵まれている。恵まれたため、恵まれなかった。ややこしい。
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