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403号室のチャイムをならすと、伊藤さんが出てきた。いつ見ても呑気そうな顔つきで、宇宙人とは思えない。
「鐘の音がするんだけど」
とわたしが言ったら、
「うん。今ちょうど除夜の鐘をついているところなんです」
ゴーン! インインイン……
「メイ子ちゃんも一緒につきませんか?」
403号室にリビングに入ると、天井から重そうな釣り鐘が下がっていて、豊臣さんが鐘をついていた。
こんなものどっから運び込んできたんだろ、とか、除夜の鐘はお寺に行ってつかせてもらうんだよ、とか、まさかここで108回もつくの、とか、言いたいことがいっぱいあったけど、そのとき天井がフックごと剥がれて釣り鐘が落下した。
床が抜けるんではないかと思うほど大きな音がなって、ミシミシとフローリングが悲鳴をあげた。
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