美味しいモノに私はなった

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「ねえおねーさん、死ぬのは明日にして今日泊めて。僕に恩を売ってたらいい目見ると思うよ」 「何よ、君のお父さんやらお母さんやらが空から降りてきて、私の罪を帳消しにしてくれるっていうの?」 「それはないけど、死ぬとき痛くしないであげる。それくらいならボクにも出来るから」  罪を帳消しにしてくれないのなら、正直他はどうでもよかった。とはいえ今日はもうその気が失せていたので、確かに恩を売っておくのも面白い。  分かったと言えば少年は「やったー取引成立」と子供らしく無邪気にはしゃぎ、イェーイと私に抱きついてきた。白い翼がふわりと私を包み込む。 「おねーさん、部屋思い浮かべて。そこまで飛んで行くから」  随分なファンタジー仕様だなんて考えまい。  部屋を思い浮かべて、一応住所も少年に告げて目を閉じた。体が浮いている感じがするけど酔いのせいかもしれない。  空を飛んでいるの?そうだよという会話はしたけど、少年の胸に顔をつけるような感じで抱かれているので残念、何も見なかった。
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