美味しいモノに私はなった

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 シャワーから上がってきたら、簡単だけど朝ごはんが用意してあった。とはいえ材料はもともと私のキッチンにあるものなので、目を見張る出来栄えとはいかないが。  穀物シリアルをお皿に盛って横に牛乳パックがドンと鎮座。少し焦げたスクランブルエッグにミニトマトが数個。電子レンジからメロディー音がして、冷食の唐揚げが温まって出てきた。 「ありがとう」  椅子に座れば対面に少年の笑顔。どういたしましてと言いながらスプーンを渡してくれる。 「君は食べないの?」  少年も席についているのに、彼の前には皿もスプーンもなかった。フォークだけはあり、彼はそれでミニトマトをプツリと差し私の口元に差し出してくる。 「僕は後でもらうから心配しないで。はい、あーん」  それから自分でも食べたし、少年から差し出されるフォークも勿論口に入れる。お腹が満たされるのはいい。単純にいい気持ちになれる。いい気持ちになると人は良い人になれるのだ。 「気分少しは良くなった?」 「うん、ありがと。天使君優しいね」  少年は大人びた感じの陰のある笑みで首を振った。 「優しくないよ。だっておねーさんが自殺しようとするの止めないじゃない」  少年はいつの間にかシリアルを食べている私の横に椅子を持って来た。そこから白くて細い手を伸ばし髪を触る。ゆっくりと耳下から顎線に沿って人差し指が滑り落ちた。 「そ、そういえば天使君、君の名前何ていうの?私、何て呼べばいい?」  ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。両の手を首に差し入れ髪の毛を後ろに払う。そのまま唇が首に寄せられる。  耳元に囁かれる言葉は「あくまだよ」。  キス? いや違う、喰まれた。耳たぶはすっかり彼の口腔内で、舌で弄ばれている。 「僕、天使じゃなくて本当は悪魔なんだ」 「ふへゅ?」  天使君、いや悪魔は面白がっている声でゴメンネと笑う。それから耳の穴を吸った。 「ひぎゃああぁーっ!!」  耳が吸われる。何かが吸い出されている。
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