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めぐり逢わせ
北海道のとある山の麓、観光名所である坂の程近くにペンション『オクトゴーヌ』という宿泊施設がひっそりと存在する。
そこは約五十年前、金碗道夫という当時四十歳の男性が、彼を含む八人のきょうだいで運営を始めたペンションだった。建物は三階建て全八室、全ての仕事を初代オーナーとなった長男道夫を筆頭に八人のきょうだいで仕事を分業し、アットホームな雰囲気を売りに地道ながらもコツコツと運営を続けてきた。
きょうだいの中には早くに亡くなったり別れがあったりしながらも、二代目オーナーは長姉であるしのぶが、現在は三代目オーナーとして三男の衛が跡を引き継いでいる。しかし五十周年となった一昨年、八十歳を迎えた彼の体に病が見つかり、独身のまま老齢を迎えたことで後継者がいないのを理由にペンションを閉館する決意を固めていた。
閉館間近となった十月末、最後の客として一人の若い男性が宿泊した。彼の名前は堀江仁、長身で端正な顔立ちをしており、物静かでどことなく影をまとった印象の男性だ。
二日分ほどの着替えと僅かな金しか持ち合わせておらず、それらを入れていた鞄も使い古されたクタクタな代物で着ている服もみすぼらしかった。ほんの数日の滞在期間に毎日二回教会へ足を運び、花を片手に墓地へと出掛けている様子だった。
衛はそんな男性客に興味を持ち、彼がフロントに立ち寄った際に声を掛ける。
「どういった御用向きでこの街へ?」
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