ーー子犬みたいな彼

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「な、なんだよ! お、お前が勝手に飛び出してきたんだからな!」  男のなんともカッコ悪い捨てぜりふ。バタバタと無様な足音が遠ざかっていく。  尻餅をついたまま、何事か把握できずにキョトンとしてしまう。打ち付けた尻が痛いなぁと他人事みたいに考えながら。 「うぅー・・・。だ、大丈夫ですか?」 「え?・・・ええ!?」  聞こえてきた声と、見えた顔に驚愕する。  だってそれは日下くんで、右の目元を真っ青に腫らしていた。 「は!? 君、代わりに殴られたの? え、バカなの?」  思わず、本当に思わずそう口走ってた。  だってそうだろ? 自業自得で殴られそうになった男の身代わりに殴られて目を腫らして痛い思いするなんて。バカ以外にあるの? 「は、はは。咄嗟で・・・。かっこよく助けられなくてすみません」 「いや、謝るところじゃないよな?」  むしろ謝るなら、俺の方で。  両手ついて頭を地面に擦り付けて土下座しないといけないレベルで。しないけど。
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