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「冷やして落ち着いたら帰ってね。今日は定休日なんだ。俺も休みたいし」
「あの人のことが、好きなんですか?」
「・・・は? いやいや。そうじゃないから平行線なんだろ」
「違います。さっきのじゃなくて、この間の」
冷やしていた氷をはずし、まっすぐと俺を見据える。
浮かべていた笑顔をすうっと消し去り、大きく息を吐き出し椅子に座った。
「失恋して傷ついたんですか? だから、そんな風にーー」
「知った風な口聞くな」
自分でも、思った以上に重低音の声が出た。
日下くんは息をのみ、一瞬黙る。
「・・・っ、嫌です。俺は、朝霧さんのことが好きです。ずっとそう言ってます」
「俺は応えられない。はっきりとそう言ったことはなかったけど、ずっとスルーしてきただろ。察してよ」
「どうしてですか。他の人は来るもの拒まずなんでしょう?」
「じゃああんたのことも、使い捨ててやろうか? それでいいならいいよ。今すぐでもヤる? でも、俺は本気にはならない。誰とも付き合わないし、誰とも恋はしない」
バカだ。大人になって、冷静に対処するつもりだったのに。
やけくそになって、言い返して。
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