ーー君はヒーロー

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ーー君はヒーロー

 世の中には、どうしようもないことがたくさんある。  子供は親を選べないとか。  一日は二十四時間しかないとか。  男しか、好きになれないとかーーー。 「荒んでんなー」 「うっさい」  友人である(たちばな)郁巳(いくみ)が居酒屋の席で肩をすくませながらそういった。  俺は項垂れながら、絶望の縁にたっていた。  昨日、たまたま朝霧さんを見かけ、駆け寄ろうとしたのもつかの間男と一緒にいることに気づいた。  しかも、何やら揉めていた。とっさに間に入って俺は負傷するし、朝霧さんには呆れられるしさんざんで。  しかも、聞けば朝霧さんの爛れた男関係が浮き彫りになった。  何となく、そんな感じはしていた。実際にそういう場面を見たのは昨日がはじめてだけど。  遊び慣れているような雰囲気はいつだってしていたし。  俺が好きだと言う言葉を、きれいに流されていることも気づいてた。
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