ーー望まない立ち位置

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ーー望まない立ち位置

 ベッドの上、眠る愛しい人を見つめる。  ぐったりと青ざめた顔で横たわる姿は、死んでいるかのようで。  何度も確かめるように口許に手をやり呼吸を確かめる。  そして細いながらにちゃんと呼吸をしていることに心底ほっとするのだ。  先程のことをずっと反芻している。  恒例になってるバーへの通い。  今日もいつも通りいくつもりだった。  でも、ちょっと仕事が押してしまっていつもより大分遅い時間になってしまった。  そしたらバーの看板には”close”の札が掛けられていて。  そんなこと、今までになかったから少し気になって扉を開くと鍵はかかっていなくてすんなりと開いた。  元々雰囲気のある薄暗い店内。  でも、いつもと違うのはあちこちに散らばる割れたグラスとワインの瓶。  そして見つけた愛しい人。  でも、いつもとは明らかに違う様子に息を呑んだ。  酒の匂いが立ち込めるなか蹲り回りには空いたワイン瓶が数本転がっている。  顔をあげたさ気に見えたシャツには赤い染みがあって、随分飲んだのだろうことが伺えた。
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