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朝霧さんは、俺を純粋無垢な無害な人間だというけれど。
そんなの、ただの偶像だ。
いつだってニコニコ笑っているのは、それは人に嫌われたくないからだし。
これ以上敵を作りたくないからだ。
”ゲイ”というだけで、奇異な目で見る人間はどこにでもいるし、蔑みの言葉を投げつけられることもある。
それでも、やっぱり人とうまくやっていきたいと思う自分がいて。
取り繕う術を得た。
少なくとも、ただの日下晴という人間を嫌う人がいなくなるように。
ゲイの日下晴は遠ざけられても、少しでも害されない自分でいるために。
「朝霧さん。俺を好きになって。俺は絶対、朝霧さんを苦しめたりしない。そんな風に傷つけたりなんてしない」
「・・・・・・」
「そんな奴、やめちゃってよーーー」
「あいつを悪く言うな!」
酷く苦しげな顔で。
叫ぶ言葉は、俺の胸を刺す。
こんなに傷ついても、どうしてその人を庇うんだ。
その人のせいでそんなボロボロになってるのに。
バカだ。朝霧さんは、バカだ。
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