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ーー子犬みたいな彼
Ivy=アイビー=と名付けたバー。
従業員は俺一人の、俺の居場所。俺の城。
ここだけが、俺の唯一の場所。
「朝霧さん! こんばんは!」
今は昼間かと突っ込みたくなるほどの明るい顔でバーの中へ入ってくる一人の男性。
男性というには幼く見える彼は、最近ここの常連となった日下晴という、名前も太陽みたいに晴れ晴れとした名前の男だ。
幼く見えるといっても童顔なだけで、年は二十五と、成人して五年は経っている。
しかも、童顔なくせに身長は高く、見上げるほどではないが俺より数センチほど高い。
彼は、俺の案内なんて待つことなくいつものカウンターの一席に座る。
空いているときは決まってその席に座る。彼の特等席みたいな場所だ。とはいえ、彼が勝手に決めているだけだが。
「日下くん。こんばんは。今日も来てくれたんだね」
「もちろんです。朝霧さんに会いに」
にっこりと爽やかな笑顔で告げられるものだから、反応に困る。
彼は、こうして毎日のように対応に困る台詞ばかりを投げてくる。
少し、対応に困る客でもある。
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