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「よく飽きずに来るね。たいして酒も飲めないのに」
彼、日下くんはかなりの下戸らしく、たくさん飲むとすぐに眠くなるらしかった。
最初の頃はまだ飲んでいたような気がするけど、ここ最近はここに来ても毎回ノンアルコールだ。もちろんノンアルコールカクテルなんてものは取り扱っていないため、ソフトドリンク。
何が楽しいのか、それなのに三日と開けずに通いつめてくるのだ。
その理由を彼は、
「朝霧さんのことを好きになったから」
と、臆面もなく言ってのける。
そう。本当に困った客なのだ。
「昨日のお客さんってーー」
「っ、」
すっかり座って落ち着いた彼がいの一番で切り出した話題は、もっとも思い出したくない類いのものだった。
そうだった。こいつはその昨日の場面に運悪く居合わせたのだった。
いや、この空気を読まない無神経さが項を奏したのか、話題は早々に切り替わり俺の動揺を孝明に知られることなく終わったのだった。
ならば、お礼のひとつでも言わなくてはいけないのか?
いやいや。そんな必要はないだろ。ただ居合わせただけだ。
正直、こうして掘り返されることの方が胃に悪い。やっぱり、ありがたくもないものだ。
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